電話加入権は「財産」だからこそ複雑
今でこそ電話回線は当たり前のものになっていますが、昔は電話回線というとそれだけで一種のステータスとも言えるものでした。そのため、電話加入権というのはとても高額なものでもありました。
実際にその名残は2000年代まで続き、2005年に37,800円になるまでは72,000円とかなり高額な権利だったのです。「そういえば昔は異常に高かったなぁ……」と懐かしく思っている方もいるかもしれませんね。
こういった経緯があり、今でもまだ電話加入権(施設設置負担金によって手に入れた電話を設置する権利)は「財産」として認められているのです。そのため、電話回線の休止や名義変更は、いわゆる財産の放棄や譲渡という形式になっていて、その手続きは簡単ではありません。
しかしながら、それについてきちんと理解している方というのはそう多くありません。実際に、今自宅の電話回線がどういう状況なのか説明できないという方がほとんどかと思います。
ただ、電話回線に関してはきちんと休止していないと身に覚えのない電話代を請求されることもあります。身に覚えのない電話代が請求されて「詐欺だ!」と思ったら、単純に自分の不手際だった……なんてこともあるのです。
厳しい言い方になってしまうのですが、この手のトラブルに「ちょっと忘れていて……」「よくわからなくて……」という言い訳は通用しません。トラブルの発生を防ぐためにも、きちんとした手続きを取る必要があるのです。
きちんとして手続きを進めていくためにも、電話回線につちて今一度理解を深めていきましょう。
電話回線の解約と休止の違い
まずは、電話回線の解約と休止の違いについて押さえておきましょう。どちらも電話を利用しなくなるときに必要な手続きなのですが、いったんは利用をやめてそののち電話番号を変えて利用する場合には「利用休止」、電話番号を変えない場合には「一時中断」、今後利用する予定がない場合には「解約」という形になります。
より詳しくそれぞれについて解説していきましょう。
【利用休止】
利用をやめて、再度利用する場合には電話番号が変更になります。ただ、最大で10年間権利を預けることができます。電話をとめるときには電話をとめる工事費が、電話を再開するときには電話を再開する工事費がかかります。
【一時中断】
利用をやめても電話を再度利用する際には同じ電話番号を利用できます。どれだけ利用をとめても構わないのですが、月々の回線使用料は必要になります。電話をとめるときには電話をとめる工事費が、電話を再開するときには電話を再開する工事費がかかります。
【解約】
今後利用する予定がないなら解約で、利用する予定がないからこそ電話をとめる工事費や電話を再開する工事費も必要ありません。 このように「利用休止」「一時中断」「解約」それぞれの違いをきちんと理解した上で、自分がどのパターンに当てはまるかを、考えて申請しなければいけません。
3種類の名義変更
また名義変更についても、大きくわけて3つの種類があります。ひとつは電話の権利を他社に譲る「譲渡」、もうひとつが遺産相続や法人の合併に伴う「承継」、そして最後のひとつが結婚や商号の変更などでおこなうことになる「改称」です。
こちらについても、それぞれ詳しく見ていきましょう。
【譲渡】
電話の権利を譲るのが譲渡なのですが、個人においても法人においても譲渡承認手数料として1契約回線ごとに800円(税抜)がかかります。さらに、必要となる書類がいろいろとあります。個人の場合、旧契約者・新契約者双方とも契約者名・住所・生年月日が確認できる書類が必要になります。
運転免許証やパスポート、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード(個人番号カード:表面)、身体障がい者手帳、療育手帳精神障がい者保険福祉手帳といったものであれば1点でOKですが、それ以外の場合には必須書類として健康保険証か国民年金手帳を、補助書類として印鑑登録証明書、住民票、公共料金の領収証書いずれか1点を用意することになります。
必須書類と補助書類は必ずセットで用意する必要があります。ちなみに、写し可です。法人の場合には、旧契約者・新契約者双方とも契約者名・住所・設立年月日等が確認できる書類として登記簿謄本(登記簿抄本)、資格証明書、現在事項全部証明書、地縁団体台帳、印鑑登録証明書などが必要になります。
【承継】
相続や法人の合併などに伴い、電話の権利を受け継ぐ承継の場合、個人においても法人においても手数料は無料となっています。
個人の場合、死亡の事実及び相続関係が確認できる書類として全部事項証明書(戸籍謄本)・個人事項証明書(戸籍抄本)・遺言書(公正証書の場合を除き、家庭裁判所の検認があるもの)・法定相続情報一覧図といったものが必要になります。
さらに、新契約者の契約者名・住所・生年月日が確認できる書類として運転免許証やパスポート、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード(個人番号カード:表面)、健康保険証、国民年金手帳といったものも必要になります。
法人の場合、承継関係が確認できる書類として登記簿謄(抄)本、または履歴事項全部証明書が必要になります。個人においても法人においても、必要となる書類は写し可となっています。
【改称】
結婚などで名前が変わった場合や会社名が変わった場合には改称となるのですが、こちらも個人・法人ともに手数料は無料です。個人の場合、名前が変わった事実が確認できる書類として「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)」(新旧の性が記載されているもの)が必要になります。
法人の場合、商号などが変わった事実が確認できる書類として登記簿謄(抄)本、または履歴事項全部証明書(新旧の法人名と成立事実が記載されているもの)が必要になります。
個人においても法人においても写し可となっています。 ざっとご紹介しましたが、それぞれで必要な書類や手続きが違ってきますのでNTTのホームページなどでご確認いただければと思います。
各キャリアごとに調べて手続きを
ここまではあくまでもNTTの固定電話の話です。最近ではNTTのIP電話や直収電話、他のキャリアによるIP電話などを使っている方も多いでしょうから、そういった場合はこの限りではありません。
各キャリアごとにお調べください。
電話施設設置負担金が廃止になる日も近い?
電話回線の休止や名義変更というのは欠かすことのできない正式な手続きなのですが、とても複雑です。これもすべて電話の権利というものがいまだに財産として認定されているからなのですが、NTTと総務省は今後、電話施設設置負担金に関して廃止の方向で検討しています。
というのも、インターネットやIP電話/携帯電話の普及によって固定電話の利用率が激減していますし、今では電話網がほぼ完全に確立されてしまったからです。
さらなる設備投資は不要がなってしまったわけです。 この廃止がなされれば、今後はこの手続き自体もかなり簡略化されるはずです。
固定電話を使わないご家庭が増えている今だからこそ確認を!
昔は一家に一台が当たり前だった固定電話なのですが、今では固定電話を使わないご家庭や家に電話がないというご家庭も増えています。そういったご家庭では、是非今一度ご家庭の電話の権利がどうなっているかをご確認いただければと思います。
知らず知らずのうちに余計な料金を支払っている可能性もあります。 今は何事においても見直しが必要な時代です。 家計の見直しや保険の見直しと同じように、改めてご家庭の電話回線について見直しをしてみましょう。